第二十七説 前編「よしッ!これで邪魔者はいなくなッたなッ!!」 ファラリカにとっての一番の邪魔者、のどかが宝木の元へ走っていったのを見て、久しく見ていなかった、真っ赤な髪とカウボーイハットに視線を送る。 「・・・んなッッ!!?」 思わず二度見。 久しく見てなかった間に、紅炎が上半身裸になっていたのだ。 手には脱ぎたてかどうかは知らないが、着ていた服があった。 「なにしてやがんだ・・・?」 そして、その服を左右に引っ張り、引きちぎっていた。 激しさが売りのファラリカが静まる。 それくらい、理解不能な行動だった。 「・・・はッ!?あぶねェ!思わず黙りこくッちまッたぜッ!!テンションあげてッ・・・ウララララァァァァァァ!!!!」 己を取り戻す為に叫び散らす。 「・・・なにしてんだ、あいつ?」 「・・・さぁ?」 ファラリカが紅炎の不可解な行動を見送った後、今度は紅炎達がファラリカの異常ともいえる行動を見つめる。 「しャあ!!気合十分だぜッ!!」 二度、頬を思いっきり叩く。 パァン!と気持ちのいい音がした。 それが戦闘再開の合図だった。 真っ赤に染まった頬のまま、紅炎達の元へ走り始める。 「よし、じゃあ予定通り、よろしく」 「・・・OK」 ランドテスタは少し不安そうな顔を見せたが、紅炎を信用し、うなずいた。 うなずくと紅炎に背を向け走り始めた。 「あん?やッぱ軟弱な腰抜けやろうだな、おいッ!!」 挑発されるが今度は乗らない。 挑発に乗ってしまったら紅炎の命が危ないからだ。 それを見て、ファラリカは向かい合う紅炎を無視して、逃げるランドテスタを追おうとする。 「おい、待てよ。あんな腰抜け野郎無視して、おれと戦おうぜ?」 ・・・おい。 思わず挑発に乗りそうになる。 「まァ、そうだな。おまえからしとめてやるよッ!!」 紅炎の誘いに乗ってきてくれた。 再びファラリカが紅炎の方を向くのを確認すると、すぐさまブーメランを投げつける。 「はいッッ!!余裕ッッ!!!」 まだ紅炎と距離があった為、横に移動してゆうにブーメランを避けることができた。 唯一の武器、ブーメランが避けられてしまっては、紅炎にはどうすることもできないはずだった。 「まず、一匹目ッ!」 ランドテスタに比べて見た目が弱そうだ、と判断したファラリカはいつも通り単調なパンチを繰り出す。 だが、実際そこまで弱くない紅炎は、ちゃんとその拳を見極め避けた。 しかもただ避けただけじゃない。 反撃までもしたのだ。 プリンセスホテルでのヒールドレスの助言を頭に入れ、大振りの攻撃をしないように練習してきた紅炎は、小さいモーションでファラリカの腹部に一撃決める。 「う・・・」 完全に下に見ていた相手からのカウンターに動揺し、一旦距離をとる。 「やるじゃねェか、三下顔」 「ありがとうよ、四流芸人」 「んなッ!?誰が芸人だよッ!!」 再び向かってくる。 その後もしばらく2人は拳を撃ち合っていた。 最初当たったカウンターもファラリカが油断していただけで それからはなかなか当たらず、拳が空を切るばかりだった。 だが、その一方、ファラリカの攻撃は当たっていた。 もちろん、石化するそのグローブには当たってはいない。 当たっているのは、蹴りだけだ。 それはファラリカの拳を必要以上に警戒しているからこその結果だった。 正直、足の動きは見ていない。 どんどんダメージを蓄積していく。 だが、そこはさすがのタフさだ。 ヒールドレスに遊ばれていたのが、ここにきて役に立っているみたいだった。 ・・・くっ。 やっぱダメか・・・。 ランドテスタ、早くしてくれ・・・。 ダメージが蓄積され、身体が思うように動かなくなってきてから、紅炎は一切の反撃の手を止めた。 反撃している余裕すらなくなった、ということだった。 反撃の隙を見つけていた分、守りにまわす。 そのおかげで、先ほどよりは蹴りも避けられるようになった。 それでも、当たるものは当たる。 早く・・・。 |